放任栽培・整枝栽培・株間・栽植密度・光合成について考える。

家庭菜園を始めよう!と思い立ち、どんな野菜を育てようか?と、あれこれ考えるのは楽しいひととき、家庭菜園の楽しみ方のひとつですね。

写真 野菜達(植物達)は、大地に根を下ろし肥料を吸収し、太陽の光を浴び光合成を行い、生育する生き物です。従って基本的には日当たりの良い畑の方が、悪い畑より成績は良いですよね。 野菜達それぞれで光合成の飽和点(ひらたく言うと、これ以上食べられない満腹状態みたいな感じ。)が違いますので一概には言えませんが、無いよりあった方が良いのは間違いないです。
飽和点以上の太陽光線を浴びたとしても、自然の状態で植物が光を食べ過ぎておかしくなる事は、普通ありませんので...。


写真 さて、話は家庭菜園に戻りますが、栽培する野菜が決まったら、何本植えようか?どんな間隔で植えようか?と悩みますよね。参考書を読み、WEBで検索し情報を集めますが、各々色々な数値が記載されています。例えばスイカだったら、ある参考書には株間60cm、ある参考書では75cm、あるWEBページには55cmとまちまち。畝幅は1m?2m?それとも3m?親ヅルは葉5枚で摘芯、6枚で摘芯?子ヅル3本伸ばす、4本?5本?そもそも放任?孫ヅルはどうするの?ひ孫は?等々...。
悩みますよね。(^^;)


写真 それぞれの参考書で書かれている数値は、適当に書かれているのでは無く、ちゃんと根拠がある訳ですが、執筆者の栽培管理イメージが反映されており、そこは執筆者によりチョイチョイ異なるものです。

生き物ですので当然ですね、犬や猫や鶏の飼い方が人によってチョイチョイ違うのと同じ。


写真 しかし、植物も生き物である以上、越えてはいけない一線があるのもまた犬や猫や鶏と同じ。飼育方法が悪いと元気が無くなり、エサを食べなくなり、毛が抜けたり、病気になったり、最悪死んでしまいます。

ですので、栽培する植物が決まったら、まずはその植物がどう言う性質の植物なのか?は、大ザックリでも良いので頭に入れましょう。


野菜の皆さん、光どの位いるの?光飽和点について。
気になる方は上記文字↑↑↑か下画像↓↓↓をクリック!
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写真 植物が生育するために必要な条件は大ザックリ「温度」「水分」「肥料」そして「光」。この四つの条件の中で、人工的に入れてやることが出来ないのが「光」。遮光して減らすことは出来ても、増やすことが出来ないのが「光」。

つまり「太陽光線」は、畑に照射されるMAX量は決まっており、それを栽培・生育している野菜達が分配している形な訳です。


写真 植物は基本、大きく移動することは出来ません。
つまり、行おうとしている栽培スタイルを良く考慮して「栽植密度」を事前に決定する必要があるのです。

菜園に定植した時点で、一株に分配される「太陽光線量」は決定しています。減らすことは出来ても、増やすことは出来ません。

ですので、スイカを例に挙げると、放任栽培の予定で定植したけれど、方針転換で整枝栽培に変更することは出来ても、整枝栽培の予定で定植した場合、手が回らなくなって途中から放任になってしまったと言うような場合は、過繁茂状態になり光線不足で失敗する訳です。



写真 良くお問い合わせ頂く事例で菜園ビギナーさんが、スイカを定植したけれど、「親ヅルは本葉何枚で摘芯するんですか?」とか「子ヅルは何本にするんですか?」と言うようなご質問の場合は、栽植密度をお聞きしてお答えする訳ですが...。
期待している答えと違い、ガッカリされるケースが結構ありますね...。

さて、前置きが長くなりましたね。では、大ザックリとした栽植密度と光合成について考えてみましょう。

写真 野菜の葉は、基本直射日光が直に当たっているのが最高です。植物の葉を通過した太陽光線は、おいしい所が吸収され、いわば「出涸らしのお茶」みたいな感じで下の葉に当たります。従って葉が重なり合っている場合、下になっている葉は光合成の効率がガクンと落ちます。
しかし、葉を維持していくために養分は必要ですので、下になっている葉は自身で光合成して作り出した養分以上の養分をもらって生きている状態になります。


写真 ゴーヤなんかでグリーンカーテンを作ったことがある方は良く解ると思いますが。カーテンで出来た影になった所は涼しいし、木漏れ日は柔らかいでしょ!


写真 ひと株が光合成して作り出した養分総量に、余裕があれば良いのですが、不足するといわゆる「光線不足」状態になります。ベロベロに徒長した、色の薄いペラペラの葉やヒョロヒョロの枝が、光を求めて上に上に伸び上がって他の葉の上にのしかかり、下の葉は光線不足になり、を、繰り返し「負のスパイラル」が続きます。
そのような状態に陥った野菜は、実が成らないのは勿論、仮に実っても美味しくなく、小さく、数も少ない。徒長した葉は弱く、風通しも悪くなり、病気になり、虫がわき、最悪枯死します。


ですので、栽培期間中、光線不足にならないような栽植密度で定植する必要があり、
各参考書に書かれている数値は、ちゃんと記述の通り管理すると、光線不足にならないような栽植密度が記載されている訳です。


しかし、菜園の条件は千差万別、なかなか参考書の通りという訳にはいかないものです。ですので頭の中でイメージしながら自分の菜園を一歩離れて眺めてみて下さい。
野菜達の葉は皆、サンサンと太陽光線の直射を受けていますか?重なり合って森のようになっていませんか?風通しは良いですか?野菜達はSOSを出していませんか?


園主はSOSを感じ取ったら、何らかの行動を起こしてあげましょう。摘葉したり、ツルを間引いたり、最悪、一株おきに抜き取ると言ったような荒技も場合によっては必要になるかもしれません。

ですから、「ひと株でも多く植えたら1個でも多く収穫出来るだろうと」考えると失敗します。太陽光線は有限です。


あと、太陽光線とスペースを有効に使用するとなると「立体栽培」も選択肢のひとつとして考えられます。しかし、この場合でも影になる部分は出てくる(都会の高層ビル群でも隣接している所は影でしょ。)し、労力もかかります。でも、立体栽培は植物の生育過程が良くわかるので、勉教になるよ!
皆さんの菜園スペースと労力を天秤にかけて、楽しく、無理せず、無茶をせず、菜園ライフを楽しみましょう!



おまけ、店長のつぶやき...。
私の経験上のイメージとして、西瓜やメロン・南瓜等のツル植物の放任栽培の場合、少々混み合っていても、葉が2階建てにならずに平屋状態が維持できていれば、大体OKだと思います。欲を言うなら、生育中盤をすぎても、遠目に見てチラチラ葉の隙間から地面が見えるくらいなら最高です。そういう畑の葉は、皆フル稼働で光合成をせっせせっせと行っています。下手な整枝栽培で管理された果実よりも数段美味しい果実が収穫出来るでしょう。面積でイメージすると、スイカ、メロンに関して言えば、 一坪(3.3平方メートル)一株ぐらいでしょうか。我が菜園の放任栽培ムーンライトメロンは糖度15度を超えてきますよ!(節度ある放任栽培やけど。)太陽光線は当ててナンボ!無料の肥料!

写真 くどいようですが、欲を出して「ひと株でも多く植えたら1個でも多く収穫出来るだろうと」考えると失敗しますよ! あとね、「放任」と「放置」は違うよっ!

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